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セシリア

Cecilia

セスの母、マギの妻。元王族だが現王室の嫡流とはさほど近い血筋にはない。
やや気の強い性格で、婚姻にあたり王宮では侍女、〈淀み〉では夫であるマギに対し、誠意を測るような脅迫としての自死の仄めかしをした。最終的には円満に収まり、マギとは良い関係にあった。
双子を妊娠中、精霊らしきものに子供のうちいずれか一方の命を選ぶよう迫られ、男子を選んだ結果セスが生存、妹が死産となった。この件は生涯自ら口外することはなかった。
セスが継承権を持つ直前、一夜のうちに金眼となって間界に落ち、その対処を巡ってマギとセスが対立する原因になっている。
更にセスの鍵守継承の儀式において、間界からの使者として〈狭間の石〉となったセシリアが現れた。これによりセスが儀式の続行を拒否、〈淀み〉を出奔することとなった。

鍵竜(けんりゅう)ハイリルカ

Heilirka the Dragon Watch

南の〈門〉を管理する精霊。創門に際し自ら管理者に志願した。
元は蟒蛇の霊が精霊化したもので、竜を嫉視したと言われている。
旧知の精霊の間では「皮肉屋で陰湿、詭弁を弄する」との評価があり、〈二枚舌〉と渾名されている他、腐す為に「蛇」と呼ばれることもある。

ウィズ-ズィズ

Wiz-Ziz

セスが契約している精霊の一つ。セスが持つ指輪を媒介にしている。
現れる際は狼の姿をとり、毛色はウィズは白、ズィズは青みがかった灰色。どちらも目は緑で瞳孔がない。また、体温や呼吸もないため、身動きがなければ剥製のような印象を与える。大きさは自由に調節が利くが、通常は体高90センチ程。特定の人間以外には視認できないようにもできる。
人語を解するが、発声している訳ではなく、口を開かないまま話をする。
ウィズの方は冷静でやや自恃が強い一方、ウィズの方は無邪気で、尾を振ったりじゃれたりなど、犬のような振る舞いを見せる。ウィズ/ズィズ自らの表現によると二頭は不可分の存在であり、特に分けて呼ぶ必要がなければ、自身を指して『我々』と言う。片割れの知覚や記憶は常時共有されており、一方が耳にした音声を離れた位置にいるもう一方がそのまま再現することもでき、セスが盗聴のような使い方をすることがある。
ウィズは犬扱いされることを非常に嫌っている。セスが彼らを犬呼ばわりされた場合にまめに訂正するのは、セス当人の不服というよりも、訂正に協力しないとウィズに不平や小言を言われるため。

プライア

Pria

セスが契約している精霊の一つ。セスが持つ青い石を媒介にしている。
現れる際は水が人の女性を象ったような姿をとるが、下肢は水流が尾を引くような状態で脚にはなっていない。大きさは手乗り程度、もしくは成人女性と同等のいずれか。前者の場合、特定の人間以外には視認できないようにもできる。
水の操作全般に対応し、一定空間に落ちる雨水を受け止めて傘の役割をする、高圧の水流を射出し攻撃に用いる等が可能。
セスの双子の妹プリシラが死産し、その魂が魔石に固定された後に泉の霊気と撚り合って精霊化したものがプライアである。その結果、多胎児の特徴としてセスと魂の一部を共有したままとなっており、セスとは相当の感覚が共有できる他、言語によらない意思疎通が可能。基本的に人語を発することはないが、セスの夢に現れて言葉を交わすことがある。その際はその時点での彼と同年代の女性の姿で、人間の身体に部分的に水が混じり合ったような外見を呈する。
ウィズ/ズィズに『水の子』と呼ばれている。

〈合鍵〉フォルリー

Foruli the Bookmarker

先代の鍵守。数年で任を降り、在任中も目立った実績を残さなかったため、「間に合わせ」ほどの意味で〈合鍵〉の称号を与えられている。
現任マギの父、先々代〈錫鍵〉バクラスの兄、セスの祖父。
鍵守としてはの能力に不足ないものの、研究者気質で、実践的な施策や王室との折衝、双門同盟の監督といった実務に関心が薄かった。
当人も〈合鍵〉の自覚があり、マギが継承するまでの短期間の埋め合わせであることは、むしろ前向きな就任の材料だった。
降任後は継承権を放棄し、〈竜の頤〉に出向く形で研究職に就いている。
個人としては、肉親の情が希薄で妻子と没交渉。ただし周辺では原因あってのことと考えられている。

錫鍵(しゃっけん)〉バクラス

Baculus the Tin-Leg

鍵守マギの二代前。式士としてはマギよりも更に強力な傑出した人物だったが、在任中に急逝した。
かねてから後継に指名していたマギが年齢的に継承条件を満たしていたかったため、間にフォルリーが立つ事態となった。
先代〈合鍵〉フォルリーの妹、現任マギの叔母、セスの大叔母。
〈沼地〉の整備に積極的で、同時に旋界からの境界侵犯を起こしている精霊の追跡も行っていた。
双門同盟への監督も比較的厳格で、後年の消極的なフォルリーや穏健なマギと比較され、故人であることも相まって過大な批判を受けている。

アーク

Ark

〈沼地〉の隠れ里ナナリスの神殿に住む少年。
名目上は神殿の警備で短剣を携行しているが、戦闘技能はない。
内外問わず、フロウ以外の人間には拒絶的な態度を取る。
生贄である『フロウ』の候補として神殿に送られたが、エゼキエルの思惑によって神殿に留め置かれている。自身が『フロウ』にならなかったせいで次に来た子ども=フロウが代わりになったと捉えており、現在のフロウに対する庇護の姿勢はそのためである。
セスらにフロウの助けを求めたものの、監視を回避しきれなかったため、エゼキエルの目を盗んで剣の扱い方の教えを請おうとして叶わず、フロウについても具体的な状況は最後まで説明しなかった。
『フロウ』の役割は承知しているが、起源は知らずにいた。
『アーク』は本名ではなくエゼキエルが与えた名で、概ね「箱」を意味する。
後にヒューイがナナリスを訪れ外へ連れ出すことを提案した際、拒否してナナリスに留まった。

フロウ

Flo

〈沼地〉の隠れ里ナナリスの神殿に住む唖の少女。
エゼキエルに従順、明るく人懐こい性格で、外部からの来訪者にも友好的。
唖は後天的なもので、声を精霊に奪われることによって生じた障害。『フロウ』はナナリスの精霊に気に入られた子どもに与えられる名で、事実上の生贄である。自身の立場は理解しており、現実的な選択として状況を受容している。
アークがフロウに献身的であることやその理由について、気付いているが追及はせず、彼には感謝している。
元は〈沼地〉の出身ではなく、母を亡くして弟と二人きりになった後、人身売買を経てナナリスへ来た。弟をナナリスの孤児院に残して神殿に上がっているが、既に弟がいなくなっていることは察している。
最終的に生贄として死亡。
本名はレイチェル。

エゼキエル(初代)

Ezekiel

〈沼地〉再開拓に先駆けて行われた式士による実地調査の際、現在のナナリス付近に隠れ住む精霊に幻惑された男性式士。
精霊が魂を補強し魔石を生成するために必要となる子供を提供し、見返りとして生成した魔石の一部と老化を遅滞させる術を受けていた。
これらは法律や双門同盟の規律に触れるため、調査中の事故による死亡を捏造し、一般社会から離脱。
精霊の作る魔石はさほど品質は良くないが、オパールに似た外見と製法の怪しさに興味を持つような好事家に売られ、大きな収入源となった。
エゼキエルはこれらの条件下でナナリスの原型を造ったものの、その後精神を病み自死した。

エゼキエル

Ezekiel

〈沼地〉の隠れ里ナナリスの神官。女性。頬から下を常に隠している。
フロウアークと共に、ナナリスの丘の上にある古い神殿に住んでいるが、神事は行っている様子がない。
表情に乏しく陰気な印象を与え、同居者と食事を共にしない、アークに対しては威圧的であるなど、友好的な人物ではない。
『エゼキエル』は既に使用者がいなくなった古い言語での男性名である。元はナナリスの町を造営した男が使った名で、現在のエゼキエルは名と役割を引き継いだ三代目の『エゼキエル』である。町の住民と連携し、町の傍の谷間に潜む精霊に生贄になる子供を提供し、問題が発生した際には対処する役目を負う。
こうしたナナリスの在り方を非難しながら、危険を理由に現実的な行動を起こさない、臆病かつ自尊心の強い人物。
覆面の下には、式士だった初めのエゼキエルを模した刺青がある。
本名をアマンサ・ミア・ヘイズ・ザタ。〈竜の頤〉で研究職に就いていた元式士だが挫折、ナナリスに行き着いてエゼキエルとなり、今は元の式の契約は破棄されている。