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マイルズ・ブレイン・アシュトン-ロウ・イェカ

Myles Blaine Ashton-Lowe Yeka

壮年の式士の男。短剣を携えている。
蒼三を獣精で襲ったり、帷垂人と共謀して花宵を陥れたりした。
間界に落ちない金眼を人造しようという試みがあることを知り、その方法を習得し応用することで逆に金眼の発生を封じる可能性を探っている。
本人の認識では、一時的に逸脱行為をしているだけで、金眼を禁忌とするなどの式士の倫理に反しているつもりはない。そのため手を組んでいる帷垂人の男とは、協力はしているが互いに蔑んでいる。
アシュトン-ロウ家は、双門同盟の王都支部に所属する式士の旧家アシュトン家の傍流。家系の中では特に秀でたところのない人物ながら、紋章入りの短剣を携行するなど家名に対するこだわりは強い。
『マイルズ・ブレイン・アシュトン-ロウ・イェカ』は完全な真名ではなく、生名と、ミラムで用いた精霊との契約名を合わせた部分のみ。

トーマス

Thomas

ミラムの警邏隊員。24最男性。
子供の頃はナキュラに住んでおり、父は当時ナキュラのまとめ役を担っていた。、
レオンや弟のラルフと友人で、十年ほど前に家族に伴われてミラムに移った後もやり取りがある。
基本的には明るく人懐こい性格だが、〈沼地〉の住民として平均的な式士や外部の人間に対する猜疑心や、友好関係であっても深入りしない線引きも併せ持っている。

鳴糸

なりと

帷垂人の少女。花宵の連れ。黒の短髪で少年のように見え、顔の左半分を大きな眼帯で覆っている。
帷垂の弦楽器が演奏でき、路上パフォーマンスで見物料を得られる程度の技量がある。
実際は帷垂の生まれではなくロティスから亡命してきた金眼で、電撃を操る能力がある。帷垂では花宵の庇護下にある。
鳴糸自身が金眼として冷遇されたことはさほど無いが、トワイサイレニアでの厳格な異形排斥に接したことで、対人感情が悪化している。人外であるという強い自認があり、ノアにも人間に追従しないよう焚きつけるようなことを言ったりする。また、必要があれば人間に対して危害を加えることにためらいがない。
同様にリリに対しても友好的で殊勝な態度を取るが、セスにはあからさまな敵愾心を見せ、裏切り者とも評している。花宵により初めからセスの素性を知らされていたため。
リリがリリュカであった頃、帷垂で短期間生活を共にしていた時期がある。

花宵

かしょう

帷垂魔術士。女性。長い黒髪で、目元を隠しており年齢不詳だが、三十代ほどの印象を与える。
鳴糸という子どもを供に連れて各地を巡り、魔術に関わるトラブルの解決に当たるなどしている。
〈門〉の布く理法から外れた異形に手を差し伸べる帷垂の立場から、ノアに忠告した上で、セスについて何らかの疑いを見せた。
〈月の魔女〉と呼ばれる最も高名な魔術士。帷垂の実質的な元首であり、南北の鍵守とも親交が深い。創門当時から生きていると言われ、衰えない容姿を隠すために覆面を常用している。彼女自身は不老ではなく、鍵守が肉体の維持に協力している。
通名は不定期的に変えており、大抵の場合帷垂の言語で月に関する表現を含んでいる。『花宵』が最も新しい名前。セスは〈月の魔女〉を『月雨(つきさめ)』という名で認識していたため、花宵がそうだとは気付かなかった。
セスがアディーネルの人間であることは初対面の時点で察知しており、ノアへの忠告は、アディーネルが金眼を含む異形を排除する側にいるためである。セス個人に対して敵意はないものの、アディーネルでありながら異形に手を伸べた責任を果たすかどうか、成り行きを観察している。
基本的には帷垂島内におり、古くからの集落である夜止里(やどり)に居を構えている。リリュカの失踪や離反者による魔術の悪用があったため、今回のところは一時的に帷垂を離れている。
帷垂の情報網の他、鍵守から貸与されている転移術の合鍵によって呼び出しへの即時対応に備えており、また帷垂本土には代理人を置いている。

コーネル・フェアクロフ

Cornel Fairclough

地方都市ハイマケスを領都とするペアディハル領領主の下級貴族。中年男性。
ハイマケスは古来独自の精霊を祀る神殿を擁し、フェアクロフは神官長の血筋と祖を同じくする式士の家系である。当地の双門同盟支部では特段の役職にはないが、神殿との権威の均衡のためあえて就かない意図もあり、実際はハイマケスでの霊的異能者の中では一定の発言力を持っている。
創門以前の世界に関心を向けており、当時の記憶を含めた広範な知識を有する〈狭間の石〉との対話を望んでいる。そのために、の機構に反応されない独立した金眼を生み出すことを目標に、市民に対し密かに実験を行っている。
この試みには知識を与えた第三者、実行に関わった協力者が存在し、その方面から花宵に実験を察知された。花宵と、協力を要請されたセスによって一連の事態が露見。その後は双門同盟に対応が引き継がれ捜査を受けている。

エルヴィア

Elvia

〈穴〉の仲介者。アルデリシア中部で一定の勢力を持つ。セスの知人。

蒼三

そうざ

北の異大陸から来た鍛冶師。四十代男性。長い黒髪を括っていることが多い。人前に現れる際は、眼鏡をかけた上で右目は常に閉じている。
帷垂の客分として一時逗留していたが、現在はアルデリシア中部に住んでいる。異国装束で過ごし、鍛冶の依頼は夜にのみ、気まぐれにかつ異様な条件で請けるため、一部では変わり者として噂が立っている。本人曰く『刃物は打つよりも斬る方が、斬るより斬られる方が好き』。
正体は北大陸独自の由来を持つ金眼の一人。眼鏡と隻眼は偽装で視力に問題はなく、閉じている右目が金眼になっている。
北の金眼の特徴として、個体ごとに限定された特殊能力と、強力な再生能力を持っている。蒼三は未来視能力を持つ金眼。今後何らかの事態が起こる可能性の予見であり、確実な予知ではない。また、時間が遠ざかるほど精度が落ちたり複数の未来が見えたりする。他、意識的な魔力制御技術と、それによって物体に魔力を帯びさせる魔術に似た技能を修得している。
故国では生後すぐから聖職者に保護されていたが、神託者のような役割を演じさせられた上、研究目的で生体解剖を継続的に受けたため、後見人の聖職者を殺害し逃亡。
セス達の近い未来を視ていた様子で、レオンに魔石の効力を持つ剣と基本的な剣技をほぼ無償で提供した。
更に、人間からの被虐や抑圧、それらへの暴力による反撃などを経た観点から、ノアには人倫を逸脱しないよう強く忠告した。自身については既に正気ではないと自称しており、事実、庇護を受けている帷垂の土地を離れているのも当人の性質が原因。快楽殺人者であり、死体性愛の癖がある。
帷垂内部から彼の取り扱いに懸念が呈され、一定の条件と監視を設けることで領土外の居住を認められている。条件とは、帷垂内部の粛清や対外的な交渉のうち殺傷を手段とする集団への所属、その随時の指令に時を問わず従うこと。これは蒼三の殺人欲求の発散も目的にしており、場合によっては死体処理が一任され、そこでどのような暴挙があっても実質的に黙認されている。
後に鍵守ジェミニとなったセスの警護等を担うという名目で〈淀み〉に逗留。その際、名を『静三(しずみ)』と改めた。アルデリシア人には発音しにくいため、関係者からはシズと呼ばれることが多い。

ユート・ブラッドウェル

Euto Bradwell

式士の少年。クリンケルドの双門同盟支部に所属し、レオンが訪れた際には受付をしており、まだ見習いだった。レオンに再会するまでの二か月ほどの間に式の契約を済ませたが、受付担当の見習いとしては特例的な早さである。
式士としての理想は高く、クリンケルドに近い〈沼地〉の環境改善など、世のために力を役立てる姿勢を持つ。〈沼地〉出身のレオンの抱える問題にも関心を向けていた。
クリンケルドに隣接して残る、かつて精霊が棲んだ町の遺構の定期点検に随伴した際、何らかの精霊に幻惑されて契約に至った。所属支部には、他支部の知人の仲介を受けて契約できたと説明している。
実際は、縁界に現れる依代とするため悪意を持ってユートを利用した精霊であり、強度の憑依の結果ユートが金眼化しても全く取り合うことなく、自身のの本体から切り離した。
金眼となったユートは、の制御機構に含まれる自動的な反応として、その場で間界に転送され〈狭間の石〉となった。
フルネームはユート・ブラッドウェル。この町のブラッドウェル姓は、身寄りのない者が双門同盟に所属した際に与えられるもので、互いに血縁はない。危険が予測される精霊であってもユートが手放せなかったのは、出自による部分が大きい。
後にリリュカを二分割したリリと淕のうち、淕の魂の器として間界からユートの肉体が提供された。

メイヴィス・ケインズ

Mavis Keynes

レオンの妹。兄弟の中の紅一点。霊的なものと思われる不明な原因で失明している。
以前は家事手伝いをしながら教室に通っていた。五年前から視覚に異常を来し、視力低下のような症状や視野の欠けから始まり、全盲の状態、健常の状態を行き来した。半年ほど前に全盲の状態で一定し、医療的には解決せず、神官にも匙を投げられている。ナキュラには他にも視覚異常の子供が複数いるものの、メイヴィスは突出して状態が悪い。
神官が精霊による障りかもしれないと発言したため、式士を頼ることとなり、レオンが町の外へそのあてを探すことになった。
本来は快活でややお転婆の少女だが、この件以降は気落ちしつつ、周囲には気遣いからの空元気を見せている。
特に兄や両親への遠慮が強いが、弟には弱音を零すことがある。

ラルフ・ケインズ

Ralph Keynes

レオンの長弟。24歳。警邏隊の正隊員。
真面目でやや融通が利かず、少々口うるさい。弟妹の面倒見が良く、また、細かいことをおろそかにするレオンにも小言を言う。
〈沼地〉の人間の中でも一際式士嫌いで、面と向かって嫌悪感を表出する。式士以外にも霊的存在やそれと関わる人間全般を嫌っている。レオンがメイヴィスの異変を解決するために故郷を出る際、引き止めていた。
レオンの恋人であるジルに子供の頃から片思いをしており、二人に譲っているため自ら公言したことはないが、周知の事実である。
神霊嫌いは、十歳の頃レオンとともに町外れの神殿に忍び込んだ際、怪異に遭遇して以来のこと。当時レオンが前後不覚に陥り、後には神殿での記憶自体を失った上、視覚に異常を来すなどしたため。レオンに対しての神経質さもこの件に由来する。ラルフが神殿に行くことを提案し、異状に気がついても言い出せなかったなどの経緯から、長年自責の念を抱いている。元来はレオンに似た奔放な面のある性格だった。
先天的に平均を大きく外れる強い魔力を持っているが、こうした神霊嫌いから霊的異能に関連する事柄を全て遠ざけてきたため、自覚がなかった。セスの指摘で初めて知った時にも驚きより嫌悪が上回っている。
後に鍵守となったセスを頼って〈淀み〉を訪ね、式士になっている。